Lie代数は構造定数によってその基本的な構造が決定されるが,Cartan-Weyl基底を用いた形式では,その役割を果たすのがルートである。 そしてまた,負ルートは,単に正ルートの符号を変えたものであるから,結局のところ,適当な正ルートの集まりによって半単純Lie代数の構造が定められてしまう。 ここでは,そうした正ルートの集まりである,ルートの基本系の定義を与える(Dynkin図については準備中)。
互いに線形独立で,任意のルートを,すべて負ではない,またはすべて正ではない$l(=\dim \frh)$個の係数$(a_1,...,a_l)$によって
の形に表すことができるルート$\alpha_i$の集合$\Pi=\{\alpha_1,...,\alpha_l \}$をルートの基本系(fundamental system)といい,その元を単純ルート(simple root)という。
基本系$\Pi$を用いて展開したとき,すべての係数が負でないものを($\Pi$に関する)正ルート,反対に,すべての係数が正でないものを負ルートという。
単純ルートは,(\ref{eq:alpha_linear})において係数のどれか1つだけが1で,それ以外はすべて0であるルートであるから正ルートである。
2つのルート$\alpha,\beta$の差が正ルートになるか負ルートになるかによって,ルートに順序を定める。 すなわち$\alpha-\beta>0$であれば,2つのルートの大小関係は$\alpha>\beta$である。
ルートの基本系$\Pi=\{\alpha_1,...,\alpha_l \}$に対し,Cartan行列を
で定義する。 Killing形式が非退化であることから$\det (\alpha_i,\alpha_j)\neq 0$であり,この行列は正則である。